ST 国試解説 第26回 第11問~第15問

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正答:3

解説:
この問題に出ている評価尺度はよく見る尺度なので抑えておきたいです。意識レベルの評価には、Japan Coma Scale(JCS)・Glasgow Coma Scale(GCS)(言語聴覚士テキスト, 2025, p.282)筋力は徒手筋力テスト(MMT)、ADLはBarthel index(BI)・functional independence measure(FIM)、QOLはEuro-QOL・SF-36が代表的です(言語聴覚士テキスト, 2025, p.84-85)。筋緊張に関しては言語聴覚士テキストに記載はありませんが、Modified Ashworth Scale (MAS)が代表的です。ROMは関節可動域(Range of Motion)の略となります。

正答:3

解説:
言語聴覚士テキストではp.57に「廃用症候群でみられる症候」について記載があります。廃用症候群では高カルシウム尿症が発生するため、含まれないのは3の低カルシウム尿症になります。

ポイント:
骨は破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成がバランスよく働くことで保たれています。廃用症候群によって動かない状態が続いたり、無重力空間に長くいることで、骨に力が加わらない状態が続くと、骨吸収の亢進と骨形成の低下が生じて骨粗鬆症へと繋がります。更に、骨吸収の亢進によって体内のカルシウムが高値になることで高カルシウム尿症や高カルシウム血症に繋がります。(東京都保健医療局. (n.d.). 令和6年度 東京都医療機関向け研修教材「廃用症候群」. (2025年6月23日取得)) (井上 大輔. (2005). 不動性骨粗鬆症. 日本内科学会雑誌, 94(4), 643–647.)

正答:1

解説:
顔面神経麻痺による症状と側頭骨骨折で生じる顔面神経麻痺は中枢性か末梢性かが問われる問題です。残念ながら言語聴覚士テキスト内には記載がありません。側頭骨骨折による顔面神経麻痺は末梢性のため、顔面上部は病変と同側に麻痺が生じます。よって、この問題の場合、顔面上部=前頭筋の左側に脱力が生じます。よって正答は1です。2の下顎反射と3の顔面知覚は三叉神経支配、4と5はどちらとも右側のため左側末梢性神経麻痺では該当しません。

正答:5

解説:
神経鞘腫は「シュワン細胞から発生する良性腫瘍で、中高年女性に多い。全脳腫瘍の10%ほどであり、そのうち80~90%が前庭神経にできる。」(言語聴覚士テキスト, 2025, p.124)。よって、正答は5になります。ちなみに、神経鞘腫が進行することで顔面神経を圧迫して顔面神経麻痺が出現することはまれにあります。

正答:4

解説:
動眼神経がどこから出ているかを覚えているかが問題です。動眼神経は中脳から出ているため4が正答と推測はできます。
動眼神経は中脳被蓋部から中脳大脳脚を通過して腹側に出ます。一方、錐体路は大脳皮質から内包後脚、中脳大脳脚を通過します。
よって、この症例の場合、右側の中脳大脳脚周辺の障害が考えられます。

ポイント:
今回の右動眼神経麻痺と左片麻痺の組み合わせは交代制片麻痺の代表例であるウェーバー症候群(Weber症候群)と一致しています。

脳幹部の障害では反対側の運動機能を支配する錐体路と同側へ分布する脳神経とが同時に障害されるため,片麻痺のある側と反対側に脳神経麻痺を示す交代性片麻痺という特異な症状を呈することがある。なかでもウェーバー症候群Weber’s syndrome(上交代性片麻痺,病変側の眼球運動障害と反対側の半身麻痺)やミヤール=ギュブレル症候群Millard‐Gubler’s syndrome(下交代性片麻痺,病変側の顔面神経麻痺と反対側の上下肢麻痺)は有名である。(株式会社DIGITALIO. (n.d.). ウェーバー症候群. コトバンク. Retrieved June 23, 2025,)

ミニクイズ

筋力を評価する尺度として正しいのは?
A MMT B FIM C MAS

A
MMT=徒手筋力テスト

廃用症候群でみられる代謝性異常は?
A 低カルシウム尿症 B 高カルシウム尿症 C 低ナトリウム血症

B
寝たきりで骨からのCa流出→高カルシウム尿症

右側頭骨の骨折を原因とする顔面神経麻痺によって現れない症状は?
A 右側下部顔面表情筋の脱力 B 左前頭筋の脱力 C 右前頭筋の脱力

B
末梢性の顔面神経麻痺のため、顔面上部、下部ともに病変側に麻痺

神経腫瘍によって現れない症状は?
A 難聴 B 耳鳴 C顔面神経麻痺

C
神経腫瘍による症状は、難聴、耳鳴、めまいが中心

動眼神経の起始核はどれか?
A 大脳 B中脳 C橋

B
動眼神経と滑車神経は中脳に起始核がある

参考文献

大森 孝一・永井 知代子・深浦 順一・渡邉 修 (編). (2025). 『言語聴覚士テキスト』(第4版). 医歯薬出版.
東京都保健医療局. (n.d.). 令和6年度 東京都医療機関向け研修教材「廃用症候群」. (2025年6月23日取得)
井上 大輔. (2005). 不動性骨粗鬆症. 日本内科学会雑誌, 94(4), 643–647.
株式会社DIGITALIO. (n.d.). ウェーバー症候群. コトバンク. Retrieved June 23, 2025,

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※本記事において、生成AI(ChatGPT、DALL-E等)を構成案・文章草案・画像作成補助として活用しています。最終的な公開内容はSTみちが責任をもって監修・修正を行っております。また、本記事での国家試験の過去問題に関する引用は、必要最小限の範囲にとどめた上で出典を明示し、取り扱っています。問題文全文の転載は行わず、自作の解説・分析を中心とした内容構成としています。